花の肖像

牡丹

Paeonia

1990 Tokyo Japan / 1940×1620; Oil on Canvas
Gathered in the Peiping / Tadashi Yokoyama Collection

中国ム・タン山地原産。中国では牡丹を「モウタン」と呼び、千年以上もの昔から貴族階級に愛されていた。 唐の玄宗はいたくこの花を尊び香木盧薤葢に特別な亭を建て、王宮の牡丹苑を観賞したという。 また李白は楊貴妃を咲き誇る牡丹にたとえたという。 古今、東洋の多くの芸術家たちを魅了し、描かれた花である。 中国の詩文「聊斎志異」では、花の精が人間の女の姿となって現れ、男と愛しあう。 三島由紀夫の小説「牡丹」では、五百八十人もの女を殺し、その数だけの牡丹を植た苑を造り、花に華麗な名前をつけている。 絵画では日本画に傑作が多く、福田平八郎「牡丹」は荘厳な華やかさがある。 富岡鉄斎の最晩年の作として有名な「富而不驕図」は正気発動としている。 どれもあやしい感じのするもので、花妖という言葉が思い起こさせる。 牡丹を謡った詩も数多く、白秋の「牡丹の花を喰う親じ」も好きではあるが、 中国の白居易の、中でもこの章は最もこの花が華麗にあらわされていると思う。

牡丹の芳
牡丹の芳
黄金の蕊は紅玉の房の綻ぶ
千片の赤英 露爛爛たり
百枝の紘艶
灯乞う煌煌たり

Tadamasa Yokoyama